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歌謡界のイチロー、山口百恵

堀田 宇崎さんは内藤やす子さんや山口百恵さんのヒット曲も手掛けられていますが、作曲するときは、歌手の方をイメージして創られるのですか。
宇崎 作曲をする前に、歌い手さんを取りまくプロダクションや音楽出版社、レコード会社の方が集まり、ブレーンストーミングをして曲のイメージづくりをするんです。
堀田 集まってアイデアを持ち寄るわけですね。
宇崎 食事をしながら、世間話や今朝、見たニュースの話をする。そのうちに「つぎの山口百恵はどんなイメージで行ったらいいだろうか」という話に切り替わり、食事が終わるころには、次回の曲のストーリーができあがっていくわけです。
堀田 なるほど。一人の意見でなく複数の意見のなかで創り上げていくから、歌い手さんのイメージに合った曲が生まれていくわけですね。「横須賀ストーリー」や「ロックンロール・ウィドウ」などは山口百恵さんのイメージにピッタリで、彼女だからこそ歌いこなせた曲のような気がします。
宇崎 山口百恵さんは「この人はどこまで歌い込んでくれるんだろう」という可能性を期待させてくれた歌い手さんで、ぼくは「彼女は歌謡界の“イチロー”ではないか」と思っていますね。
堀田 それは興味深いお話ですね。
宇崎 百恵さんが二〇歳になったときに「曼珠沙華」という曲を書いたのですが、彼女の一番きれいに声が出ていた音域を一段階上げてみたんです。
堀田 高い音域についていけるかどうか、彼女に勝負を挑んだわけですね。
宇崎 でも彼女は、なんなく歌ってしまうんですよ。歌手としてほんとうに成長しているのです。
堀田 打ちづらいむずかしい球を投げたのに、みごとに打たれてしまった。まさに名バッターに成長していたわけですね。
宇崎 どんな球を投げても必ず打ち返してくれる、それが山口百恵さんでした。
堀田 それは、シェイクスピアもそうでしたね。新しい単語を造語してことばをつくってストーリーを展開しても常連客がどんどん解釈してしまうから、シェイクスピアは負けじと新しいむずかしいことばに挑んでいって、どんどん良い作品が生まれていきました。人というのは、そうしたやりとりのなかで成長していくのかも知れませんね。

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