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聴衆の息吹を感じながら音楽を奏でる

堀田 先生の著書「ピアニストの時間」を読ませていただいたのですが、リサイタルの最中に“神様に近づくような体験”をされたそうですね。
舘野 マケドニアの聖ソフィア聖堂での演奏中のエピソードです。
堀田 指揮者の小澤征爾さんと対談させていただいた折に、小澤先生も指揮の最中に“音楽は神様がつくったのではないか”という雰囲気を感じることがあるとおっしゃっていました。
舘野 “無”の世界といいますか、会場にだれもいないと感じるときがあるのです。
堀田 自分だけが存在しているということですか。

「演奏しているうちにからだとピアノが一体となって…」
舘野 自分だけというよりも音楽だけが存在しているという感じです。
堀田 それはすばらしい。まさに音楽家にとっては至福のときでしょうね。
 著書ではロシアのピアニスト、リヒテルのことをとりあげて、小さなホールで演奏することをたいせつにしていると書かれていましたね。
舘野 小さなホールではお客さんの息吹が感じられるので、音楽を通して聴衆と一体になれるよさがあるのです。
堀田 ぼくはシェイクスピアに関心をもっているのですが、シェイクスピアもそうですね。聴衆の息吹を感じながら台詞を絶えず変えていったから、聴衆も自然と舞台にひき込まれていきました。
舘野 ピアノをトラックに積んで、旅先で前触れもなく演奏することを理想としていたリヒテルは、晩年、小さな演奏会場を好んでリサイタルを行っていました。ぼくはリヒテルのような姿に憧れていますね。

ハンディに負けず自分の夢を叶えてほしい

堀田 2006年には「左手の文庫(募金)」を設立し、左手のための作曲を委嘱される活動を始められました。
舘野 左手のピアニストとしてリサイタルを行ってから、障害で右手が使えない若い演奏家たちが楽屋に訪ねてくることが多くなりました。左手だけで弾く楽曲は少ないので、彼らは将来に不安をもっているのです。
堀田 彼らの夢を叶える手助けをするために、左手で弾く曲の作曲の委嘱を始められたわけですね。
舘野 ぼくを病の暗い淵から救い出してくれたのは、音楽でしたからね。「左手の文庫(募金)」からたくましい想像力が生まれ、若い人たちの自由な創造性と可能性が広がってくればよいと思っています。

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