BENCHNOTE CLUB WEB SITE

言葉が紡ぎだす余白の美学

 はい。でも俳句の一番の魅力は「短い」ことでしょうね。苦しさも楽しさも、短いからこそ力強い。短いからこそ記憶に残るし、心にダイレクトに響くのだと思います。
堀田 黛さんは2010年4月から2011年3月まで、文化庁の「文化交流使」としてパリで活動されました。
19世紀に俳句が伝わったといわれるフランスでは近年俳句ブームが復活し、国をあげて年に数回、詩のイベントが催されているそうですが、現地ではどんな活動をされていたのですか。
 文化交流使として俳句の国際化を推進するために、一年間に七か国を周り、100回以上の講演をしてきました。
堀田 海外の方々に俳句を説明するのはむずかしかったのではないですか。

「俳句の一番の魅力は“短い”ことでしょうね」
 はい。俳句は五・七・五の一七音節からなる、世界で一番短い詩ですが、この「型」のもつ意味を海外の方にはなかなか理解してもらえないんですね。
フランスには茶道や華道をたしなむ人もいるので、「型」の重要性を多少は理解してくれるのですが、ほかの国々はバラバラで、「型があるなんて知らなかった」という人たちもおりました。
堀田 型がなければ、単なるショート・ポエムになってしまいます。
 はい。それで彼らに「型」の重要性を説明したのですが、「型は守っていないが、俳句の精神を理解しているからいいじゃないか」、「私の国は俳句が伝わってからかなりの年月が経つのだから、好きなように作ってなにが悪い」といった意見が出て、講演後は質問攻めでたいへんでした。ドイツでは「日本のオリジナルなんて関係がない」と言われましたので、「型を無視するのでしたら、俳句と呼ばないでください」ってきっぱり言ったんです。
堀田 それはたいへんでしたね(笑)。たしかに言語が違うから、五・七・五はむずかしいかもしれませんが、俳句は日本人の美意識、自然観、哲学、思想、情緒といったものが凝縮されてなりたっていることは、きちんと理解してもらわなければいけません。
 パリに滞在中、能楽師の安田登さんとお話する機会があったのですが、能ではひたすら型を舞台で演じるだけで、演じる役柄の心はいっさい考えないとおっしゃっていました。俳句も同様で「五・七・五」という型を守るからこそ、言葉が紡ぎだす余白に情感や情趣、作者の思いなどが余情として漂うんですね。
堀田 日本文化の神髄ともいえる、余白の豊穣、美学を海外の人たちにどう伝えていくか、俳句の国際化にはまだまだ時間がかかりそうですね。

◎フィットネス講座

お部屋の中で簡単ウォーキング