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 やはり被災直後だったので、短冊や拙著を渡しても「いらない」と返される方もいらっしゃいましたが、「一番ほしかったのは活字だったんですよ」と言って、喜んで受けとってくださった方もいました。
堀田 俳句が力を発揮していると実感されたのは、いつごろからですか。
 石巻市のある避難所で、「子どもたちが俳句を創りたいと言っている」とお聞きしたので、拙著と短冊を届けたのですが、9月に再びその避難所を訪れると、リーダーの方が「俳句って一人一人の心にぴたりと寄り添うのですね。どれほどなぐさめられたかわかりません」って言ってくださったんですね。このときはほんとうにうれして感動しました。
堀田 人の心に寄り添うということば、とても素敵ですね。人によって違うのでしょうけれど、日本人にはその人の心に添う一句というのが、どこかに必ずあるような気がします。
 私もそう思います。実は岩泉の避難所で出会ったおばあさんが、こんなことを話してくれたんですね。
「いまだから言うけれど、最初黛さんが来たときは、俳句で被災地にエールなんてむりよって思っていたんです。でも黛さんからいただいた本のなかの一句を読んだら、一瞬にして希望の光が差したんです」って。

日本古来の文化、俳句の魅力

堀田 自分の心に添う俳句と出会ったことで、すべてを受け入れ前進するきっかけをつかんだのでしょうね。
いち早く被災地に赴き、俳句との出会いを提供した黛さんの功績はほんとうに大きいと思います。
被災者の方々の創った俳句には、被災地の情景や自分たちの思いが伝わらないもどかしさ、生きる希望や復興にかける思いを、五・七・五という型のなかで伝えようとする懸命な思いが込められていて、感動すると同時に大きな勇気をもらいます。
深い喪失感と哀しみのなかにあっても、その思いを詩に詠むというのは、日本人ならではの文化だと思いますね。
 日本最古の歌集である「万葉集」の「東歌」には、東国各地の230首もの歌が収められているのですが、古来より日本人は、畑仕事や漁をしながら、厳しい状況のなかで深呼吸をするように歌を詠んで生き抜いてきました。
そうした日本独特の文化が文明社会のいまも続いているからこそ、被災者の方々は自然に詩を詠んだのではないかと思うのです。
堀田 自然の猛威の凄まじさを体験してもなお、四季の移ろいに自らの命のありどころを確認し、自然から再び生きる力をもらい詩に詠む。海外からはそんな日本人の逞しさと尊さが、美徳としてたいへん讃えられました。
 俳句には負を正に転ずる日向性があるんですね。苦しい、悲しいとダイレクトに言わず、自然を讃えることで、すさんだ気持ちが浄化できるから、昇華することができるんですね。
堀田 それが俳句の魅力でしょうね。

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