平和の『和』、なごやかの『和』
堀田 舞台も彫刻も、長く続けるには健康が大事ですよね。何か留意されていますか。
滝田 『家康』の撮影後、座禅を始めました。背中を伸ばして、吸って、吐いてと続けているうちに、「怒る」か「我慢するか」の2択ではなく、中間があるのだなと思えるようになりました。おかげで、どんなときでも安らいでいられるようになりました。
堀田 何でもご自分でうまく咀嚼(そしゃく)されて、極められて、それも滝田さんが素直だからでしょうね。演劇にしろ、仏像にしろ、人を楽しませたい、喜ばせたいという気持ちが基本にあるのですね。滝田さんの心がこもっているから、多くの人に伝わるのでしょう。最後になりますが、座右の銘を教えていただけますか。
滝田 2014年に、日本の世界遺産を巡る仕事をしたんです。そのとき、日本史における仏教の大きさを改めて感じました。アインシュタインが来日したとき、日本人はなんと親切で礼儀正しく、知性にあふれているのかと驚いたといいますね。仏教がそうやって日本人を導いてくれたのではないかと思います。聖徳太子は「和を以って尊しとなす」と仏さまの教えを一言でまとめました。平和の『和』、なごやかの『和』、僕もそうありたいと思い、『和』の一字を書かせていただきました。
堀田 意味深い、教えられるところの多い言葉ですね。本日はありがとうございました。
対談中の滝田栄さん(右)と堀田編集委員長