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音楽は日常の中で生まれるもの

諏訪内 今までも、さまざまな出会いがありました。ヴァイオリンの師であるアイザック・スターン先生はもちろん、チェリストのロストロポーヴィチさんの言葉も心に残っています。
 ロンドンでの演奏会の後、ロストロポーヴィチさんから「ちょっと君、来なさい」と声をかけていただき、ご自宅でレッスンを受けたんです。「アキコ、僕はね、ショスタコーヴィチとも、プロコフィエフとも友達だった。でもね、彼らはいきなり曲を書いたわけじゃなくて、『今日はいい天気だな。さぁピアノでも弾くか』と、日常生活の中で作曲しているんですよ。演奏するときも、そういった生活の延長上で生まれてきたものだということを、きちんと理解しなければダメだよ」と言われました。それまでショスタコーヴィチなんて、ずいぶん遠い人だと思っていたので、友達だったと聞いて、すごく親近感がわきました。
堀田 アイザック・スターンは、よく「音楽を言葉で表現しなさい」と言っています。“諏訪内の高音は、いくら高くなっても、言語が明確で何を言っているのかが分かる”と作家・宮城谷昌光氏は賞賛してみえます。師から学ばれたことを、きちんと身につけてみえるんだなと感心しました。

ストラディヴァリウスは、馬力のある楽器

堀田 以前、ベルリンで演奏されたとき、演奏中に諏訪内さんのヴァイオリンの弦が切れたでしょう。一回お辞儀をして袖に引き返され、戻ってきて何事もなかったかの様にまた弾かれましたよね。あのときはびっくりしました。そういったトラブルはよくあるんですか。
諏訪内 なるべくないように気を付けていますが、飛行機の移動が多かったり、環境が変わったりしますので、そういったことが起こることもあります。
堀田 幾種類かの弦がありますが、曲によって変えるんですか。
諏訪内 弦ではなく、曲によって弓を変えます。不思議なもので、同じ楽器でも弓が違うと音がまったく変わるんですよ。弓の木の質なのか、楽器と弓には相性があるんです。この楽器には合うけれど、この楽器には合わないということがあります。
 今私が使っているドルフィンという楽器は、ストラディヴァリウスの中でも、非常に馬力のある楽器です。ストラディヴァリウスの、いわゆる黄金期と呼ばれる頃の作品で、状態もとてもいいんです。あまりにも楽器が強くて、合う弓が無いんですよ。ですので、弓はずいぶん探しました。今使っているものは19世紀初めのフランスの職人さんによる最晩年の作品なんです。この弓で弾くと、すごく透明感のある音が出るんですよ。

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