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網膜症や腎臓病を起こさないためには私たち患者はどうすればよいのでしょうか?

2013-02-18 (月) 16:51:51 投稿者 山形県 T・ A・

40歳の女性です。糖尿病になって10年ほどです。
少し血糖値が高く、日常生活では食事に気をつけることと体を動かすようにいわれています。知人で、糖尿病が長くつづいて網膜症や腎臓病になった人がいます。網膜症や腎臓病を起こさないためには私たち患者はどうすればよいのでしょうか。教えてください。

Re:網膜症や腎臓病を起こさないためには私たち患者はどうすればよいのでしょうか?
2013-02-18 (月) 16:52:35 投稿者 Dr.糖尿病性網膜症や腎症の発症は原則的には、どのくらいの高血糖が何年続いたかによって決まります。高血糖の程度はヘモグロビンA1c(HbA1c)で判断します。
HbA1cはこれまで日本固有のJDS値でしたが、これに0.4%を加えたNGSP値に変更されました。HbA1cがNGSP値で7.0%以上になると網膜症・腎症の発症の危険性が高まり、HbA1cが一%増えるごとに約1.5倍発症しやすくなります。網膜症は糖尿病発症から5年以内はどんなにHbA1cが高くても発症することはまれですが、発症すると容赦なく進行します。発症から15〜20年程度で視力障害をきたすほど重症となります。
網膜症の発症を抑えるためにはHbA1cを7.0%以下に維持することが重要です。網膜症は高血圧や肥満によっても発症しやすくなりますので、最高血圧は140mmHg以下に、最低血圧は90mmHg以下に維持しなければなりません。また、肥満度をBMI〈体重(kg)÷身長(m)2〉で判断しますと22.0以下になるように食事療法や運動療法をまじめに行いましょう。あなたに現在網膜症があるかわかりませんが、糖尿病になって10年たっていますので、すでに発症している可能性があります。
ほとんどの網膜症は全く症状がありませんので、かならず眼底検査を最低年一回は受けて網膜症の有無をチェックしてください。また、罹病期間の長い糖尿病患者さんでは、急激に低血糖を起こすほど過剰に血糖をコントロールすると重症の網膜症を誘発することがありますので、HbA1cを1か月に1.0%前後のスピードで7.0%弱まで低下させることが重要です。
腎症の発症や進行には血糖コントロール以外に血圧や蛋白質摂取量が大いに影響します。腎症は進行の程度に応じて用心する点が多少異なります。腎症の重症度は尿に漏れ出た血液中のアルブミンという蛋白質の量と血液中の蛋白質老廃物のクレアチニンの濃度から計算された腎臓に流れている血液量(eGFR)で判断します。この両方が正常であればHbA1cが7.0%以下、血圧が140/90mmHg以下に維持するとほぼ腎症の発症は抑制できます。
しかし、アルブミン尿の増加やeGFRの低下が重症になるほど進行を予防するうえでの血糖コントロールの意味はしだいになくなり、進行の抑制には厳格な血圧管理や蛋白質・塩分制限などが重要となります。アルブミン尿のため浮腫を生じたり、eGFRが正常者の半分程度まで低下したら、腎臓専門医による管理が必要となります。

石橋 不可止(石橋クリニック・院長)

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